日本財団 図書館


 

(e)衝撃的な空気圧力
図−5.1の通り長さL0、断面積Aのシリンダ内に1気圧15℃の空気が満たされているとする。シリンダの左側にはピストンがあり、最初はシリンダとピストンの間にはわずかの隙間があるが、次の瞬間ピストンが右側に移動してシリンダを密閉し、Δt秒(<2L0/a1)の間にピストンの速度がvになったとする。このピストンの移動によりシリンダ内の空気は圧縮され、衝撃的な圧力が発生する。但しa1は音速(=341m/s:15℃)である。

012-1.gif

図-5.1 衝撃的な空気圧力

ピストンの押した力Fは運動量の変化となり、圧力の変化となるから、空気の密度をρ0(=0.125kg/m3)とすると

012-2.gif

海水の上昇速度vは、波形が正弦波であるならば振幅をA1、角速度をω1とすると

012-3.gif

で現すことが出来る。角速度ω=2π/Tであるが、有義波の1周期には2次以上の高調波が含まれているので、今、仮にω1=3×2π/Tとし、Hmax=1.8×H1/3とすると

012-4.gif

故に、衝撃的な空気圧力Plは

012-5.gif

となる。
空気室に薄肉圧力容器の理論を適用すれば、この圧力により空気室に働く引張応力σ0は

012-6.gif

である。日本周辺海域における最高波は1987年10月17日御坊沖で観測され、その時のHl/3=11.37m,Tl/3=13.8sであった。r=1070mm、t=9mmとすると
σ0=0.1kgf/mm2であり、SUS316Lの短期の許容引張応力21kgf/mm2に対して充分ゆとりがある。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 

 

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION